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ネパールの歴史
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●C.P.Gajurel氏来日
ガジュレル氏との会談 | 在日ネパール人集会

■ガジュレル氏来日

ネパール人の集会(共和国誕生祝賀会)

首藤 信彦

6月15日、恵比寿にある渋谷区民会館で在日ネパール人、ネパール各党の在日代表者と在京ネパール大使が一堂に集まって、4月10日の制憲議会選挙で勝利した 共産党毛沢東派(以下マオイスト)の外交担当ガジュレル氏の来日を記念した。日本からはインターバンドの首藤信彦と阿部和美が、国際選挙監視に参加した日本人代表として 集会に招待された。この集会の目的は、マオイスト代表の話を聞くことではなく、あくまで新生民主主義国家となったネパール共和国の誕生を祝うことであった。

冒頭、王政の廃止と民主主義ネパール建国を夢見て散っていった者、紛争の過程で犠牲になった市民を悼み、長い黙祷が行われた。通常日本で行われるような形式的な 黙祷ではなく、いつ終わるのかと気になるほど長い黙祷に感じられたが、「ああ、本当の黙祷とはこういうものだなあ」と考えさせられる瞬間であった。

最初にネパール人女性が、壇上で歓迎の挨拶を述べた。「変化のためにはあらゆる努力を惜しまない。国のために命を捧げても決して悔いることはない。ネパールは 平和へのステップを歩み始めている。政党間の足の引っ張り合いをやめて、ネパールの安定という階段を一歩一歩上っていこう」。小生はネパール語は全く解さないが、 これほど美しい内容の言葉は、どのような句で表現されてるのだろうか。尚、集会は3時間にわたって続けられ、各層・組織から人が立って演壇でスピーチを行った。 同時に、マオイストの政策に対する質問、在外ネパール人からの要望書などが渡された。以下はそれぞれ長いスピーチの要点を、留学生ジギャン・タパさんが口頭で 抄訳してくれたものをベースとしている。

ケーシー氏(マオイスト日本代表)

マオイストの幹部であるガジュレル氏が日本に来てネパールの政治状況について直接説明する、このような機会を得られたことは非常に有意義だ。 これまで制憲議会という言葉自体がタブーであったネパール社会において、日本で新たに成立したネパール共和制を祝う会を開けたことは無上の喜びである。 これまでの政治闘争で命を失った人々にはお悔やみ申し上げたい。

以前は共和制という言葉自体も禁止されており、それを口に出していたのはマオイストだけだった。マオイストが武装闘争を始めたときに、政府はそれを6ヶ月で封じ込められると 主張していた。しかしマオイストはビジョンをもって、それを実現した。

制憲議会選挙においてマオイストが圧倒的勝利をしたのだから、マオイストに政権を作らせて欲しい。立場の違う人たちも、皆で一致団結して共和制を作っていこう。 世界で一番幼い共和制をなんとかするには、むろん日本を含め、外国の支援も重要だ。

ギリラム氏(ネパール平和運動家)

ネパールが今日に至ったのは、2006年の和平と統一政府を作り上げた各党の努力の結果だ。政治的変化だけでなく、これからは経済発展が重要だ。マオイストにぜひ お願いしたいのは、YCL(青年共産党リーグ:マオイストの支配下にあると言われ、選挙前後も各地で騒動の中心となった組織)の活動の抑制だ。

スーリヤ氏(統一共産党UMLの在日代表)

ネパールはなによりも貧困の削減が必要だが、それには良い統治(good governance)が必要であり、そのためには憲法が必要で、憲法制定のためには各党の協力が必要である。

※以下、後のインタビューに基づく。

ネパールでは今も政治的な混乱が続いる。現首相コイララが辞職の発言をしたが、新政府を成立することができていない。 新政府を樹立するには、暫定憲法を改訂する必要がある。3政党(ネパール会議派、統一共産党、マオイスト)が憲法の改訂に合意し、制憲議会に暫定憲法改訂の提案をした。 しかし、2月28日当時の政府と統一民主マデシ戦線(UDMF)は「8項目合意」に調印した。内容は、主に以下の2点にしぼられる。

1.Nepal will be a federal republican democratic state by accepting the wish of the Madhesi people for an autonomous Madhes state and wish of people of other regions for a autonomous state with federal structure. There will be distinct power sharing between the centre and the region in the federal structure on the basis of list. The regions will have complete autonomy and authority. The elected Constituent Assembly will devise a way to apply the formation of such states and the rights attributed to the region and the centre while keeping national sovereignty, unity and integrity intact.
2.軍を含む政府諸機関は比例的権力分有(power sharing)とする。

これらの合意項目を盛り込んだ憲法改訂を、マデシ政党は強く要求しています。一方3つの政党はこれに反対し、合意項目を憲法改訂には含めず、改めて政治的なcommitment(公約)を すると主張している。 また、ネパール会議派は、連立政府に参加せずに野党側として責任を果たすことを強調しているが、UMLとマオイストは、依然強い影響力を持つネパール会議派にも連立政府への 参加を望んでいる。 国民からは、早くこのようなパワーシェアリングの問題を解決し、新憲法制定の議論に本格的に取組んで欲しいという声をあがっている。 今後、マデシ政党と主要政党がどう合意し、制憲議会を円滑に進められるか。マオイストがどんな連立政府を成立するか。これは最も重要なテーマだと思う。

ネパール人海外在住代表

ネパールで政党間の合意が形成され、早く新しい局面を開くことができれば、飢餓や貧困に苦しむ第三世界への影響も大きい。在外ネパール人は200万人とも言われる。 皆がネパールの発展を祈っており、彼らはネパールの将来にとって非常に重要な存在だ。政党は彼らをもっと活用すべきだ。日本では、マオイストが本当にネパールの民主主義政治を 作れるのかどうか疑問を持つ声が多い。むしろキューバや北朝鮮のような独裁国家になるのではと危惧する向きもある。もしネパールで社会主義と自由主義とが融合できれば、世界が 学ぶ点は多い。他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる。

ガネッシュ・ヨンザン・タマン大使

駐日大使

ガジュレル氏の来日を歓迎する。国王によって選ばれた官僚としては、このような状況(マオイストが政権を担い、王政が廃止される)において外交官として話すことに 悩む面もある。ネパールが共和制になったことは、日本ではまだよく知られていない。ネパールは貧しく小さい国だと考えられている。なにより、これまでは政治がだめだった。 これからは各政党が協力して、この変化をネパールにとって良いものにしていく必要がある。

大使としての複雑な思いは、外交理念の変化だ。これまで旧政権(国王)のための外交であったが、これからは国民のための外交というように理念を変えなければならない。 大使の役割は、国家間の友好関係を発展させることだが、ネパールの変化は外交をも変化させるだろう。

在日ネパール大使館は、40年間同じ場所で家賃を払い続けているが、これ以上家賃を払い続けるより、購入してしまったほうが良い。また、在日大使館は日本の地方自治体と より密接に関わり、有意義な活動をできるように尽力したい。ネパール人の代表として自分のできることを進めたいが、ネパールの変化に伴う官僚制の変化がないと、外交官は 在外で活躍できない。常々経済発展が大事だと考えてきたが、官僚制が邪魔をして日本との経済外交を進めることができなかった。官僚機構を透明性の高いものにして、日本との 経済外交を進展させたい。ネパールの経済革命を実現するためには、土地の再配分や対外政策の優先順位などを決める必要があるが、それには有識者の意見を取り入れるべきだ。 政党間の横のつながりを強め、外国から見ても透明性のある政治を創り出し、海外からの援助を拡大していきたい。

ネワール人代表

人権活動家を大統領にして欲しい。複数政党制をしっかり守って欲しい。

ガジュレル氏

日本で皆さんにお会いすることができて嬉しい。主催者、質問者、お集まりいただいた皆さんに感謝申し上げる。ネパールの政治に関して、ロンドンでネパール政治プロセスに ついての会議が開かれ、参加した。国連UNMINのイアン・マーチン氏も来ていて、これまでの経験から言っても、ネパールは独特だと話した。ネパールの政党は自分たちで 話し合い、自分たちで決定しようとしており、またそれが可能であるからだ。

マオイストが活動を始めたとき、政府(国王)はマオイストのリーダーに賞金を懸けたが、誰も首を持ってこない。そこで記者が皮肉な質問をした。「誰も賞金首を持ってこないのは、 マオイストが見つからないのではなく、首を持ってきても政府がお金を出してくれないと思っているからではないか?」 ネパールの各政党は、現在このような賞金をかけた相手と協力して話し合いを進めている。世界中に紛争地は多いが、その中でネパールは唯一外国の干渉によってではなく、 自分たちで和平交渉を進めている。

政党の責任という視点では、マオイストは制憲議会選挙を妨害することもなく選挙は実施され、マオイストは責任を果たした。今後も、政党間の協力を約束している。 新しい共和政治にはすべての政党間と合意と協力が必要であり、だからこそ、暫定憲法にも全議員の三分の二の合意条項が盛り込まれた。しかし、選挙後に政権を作って 政府を構成するに当たって、やはり単独過半数を占めていなくても圧倒的多数の議席を獲得したマオイストが政権を作る必要がある。 現在はそれを妨害する動きがあり、スムーズに進行していない。無論他党との協力が必要だが、37%の票を獲得したマオイストがリーダーシップをとるべきである。 コイララ(NC代表、元首相)が首相を務めたのは、当時NCが第一党だったからである。それがなぜ、今マオイストが政権を担うことに反対するのか。マオイストを 第一党にしたのは、国民の意思である。他政党はマオイストが大統領と首相のトップ二つのポストを狙っていると批判するが、実際はそうではない。パワーシェアリングという 視点では、首相・副大統領・議長・元首というポストが複数あるではないか。マオイストは政策的には比較的UMLと近い立場にあるが、UMLが反対するために先に進まない。 UMLはNCに接近してポストを期待しているためだ。マオイストは首相・大統領の二つのポストを要求したが、状況を打開するために、大統領ポストはあきらめている。 それでも結論に至らないのはNC・UMLが譲歩しないからである。

女性大統領はどうかという声もあり、UMLのサハナプラダン女史の名前も挙がっている。また、マデシ民族グループも大統領ポストを要求している。副大統領ポストを増加させて しまおうという動きもある。マオイストとしては、大統領は政党以外の人間から選ぶのがいいと思う。たとえば、人権活動家などだ。また、マデシ民族グループから選出するのも かまわない。もう昔のことだが、武装闘争を始めたばかりのマオイストは、タライ平原でテロ行為を行っていたマデシから爆弾の作り方を学んだ。だが、タライの分離独立運動は 拒否した。ネパールを分離国家にしてはならない。


5月28日、共和国宣言のときに、国王の家来が爆弾を破裂させたりして、議会にもかなり動揺があった。しかし午後11時にようやく議会が開かれ、国民が共和国宣言を待って 外にいるのだ、直ちに宣言しようということになった。このように、国民の政治へのチェック、国民を重視するシステムが重要だ。民意はマオイスト政権を望んでいる。もし これが拒否され続けるなら、我々は政権を離れて国民の下へ戻り、また2年後の選挙を目指して闘う。

マオイストは偉業を成し遂げた。第一には制憲議会を作り、第二には王政・独裁制を廃止した。国王の退出も容易ではなかったが、なんとか完了することができた。ギャネンドラ 国王は、王宮から出て行ってもいいが、住むところがないと言い張っていた。そこでナガルジュナの避暑地を提供すると、軍を刺激することもなく王宮を去った。

現在の政治は暫定政府によって行われている。たとえ大政党であっても、選挙で破れたら政府を降りるべきだ。ところがまだNCは在任期間が切れているにも関わらず、まだ居座っている。 だが、現在話し合いを進めているので、心配しなくて良い。この二年間に、我々は必ず新憲法を作ってみせる。ただし、この二年間は大きなチャレンジでもある。それを乗り越えられれば、 その後は安定するだろう。

マオイストに対する民主主義へのコミットメントの要求と、質問があった。これは、マオイストに投げかけられるいつもの質問だ。マオイストは複数政党制、民主主義を守ることを 約束する。既に、国連・世界銀行・各国大使とも話し合っている。これはマオイストの政策手段ではなく、守らねばならぬ原則だ。

世界の共産党をみると、ソ連は半世紀にわたってアメリカと争い1990年に崩壊したが、これはアメリカの外圧によってお倒されたのではなく、内部崩壊によって自滅したのだ。 国内の変化に疎く、ソ連の社会主義は国民の意思を確認できなかった。自由も選挙もなかったからだ。 我々は、ここから複数政党制や自由選挙の重要性を学ぶことができる。競争を認め、たとえ敗北しても数年後にはまた立ち上がる機会を得られる制度。独裁共産国家では、一度敗れれば 二度と立ち上がれないだろう。独裁共産主義への反発が、ヨーロッパでは緑の党のような運動を作ったのだ。

ネパール選挙でマオイストが伸張するとは、西欧諸国は考えもしなった。CIAの予想では、せいぜいマオイストの獲得議席は15-20席だった。だがこの大幅に外れた予想や国際的分析に 基づくメディアのおかげで、アメリカ政府も国王も油断してくれた。マオイストが勝つと信じていたのは、我々と国民だけだったのだ! 国民はマオイストを支援してくれた。もし今回の政権奪取がうまくいかなくても、2年後には再び勝利するだろう。

経済発展は重要だ。先ほど駐日ネパール大使とも話をし、我々の経済政策を説明したが、マオイストのばら色の夢(rosy dream)を日本政府も応援してくれると期待している。 経済発展と政治の成熟とは、同時に進行するものだ。


インドとの関係であるが、長年続いてきたインド・ネパール不平等条約を見直す必要がある。インドは既にこの見直しの必要性を理解しており、これまではそれを指摘する勇気が ネパール側になかっただけなのだ。ネパールは主権国家であり、不平等な条約は正していかなければならない。これからは、インドとの関係だけに力を入れるのではなく、インド・中国 両国を同距離におき、パートナーとして考える。インドとは1600kmもの国境を接しているが、中国とはヒマラヤで接している。これからはインドに流れていたタライ平原の豊かな物資を、 中国に輸出する動きも活発化させる。

ネパールは、日本やシンガポールをもとモデルとしなければならない。皆さんは日本に住み、たくさんのことを学んでいる。戦後復興を成し遂げた日本の経験を、ネパールに生かそう。 資源にしても、インドのガソリンに依存するのではなく、ネパールの水力発電や雪解け水を利用しよう。またネパールの特産物にも注目すべきだ。私の選挙区で作っているジュナール (柑橘)も貴重な果物であり、単に農産物として扱うのではなく、価値を高めて輸出していこう。 それには、インフラ整備が重要だ。ネパールは観光客が絶えないが、観光産業としては整備されていない。自然を野放しにし、痛めつけているだけだ。観光産業を育成し、人々の 繁栄に結び付けていかなければならない。自然の恵みに甘えるのではなく、ネパールの人々が努力することが重要だ。食糧生産も同様だ。タライ平原は貧しく、田畑はインドに青田買い されて、収穫利益のすべてはインドに吸収されていた。貴重な人材は海外に流出し、ネパール経済には生かされていない。

発展には資本が必要だ。世界銀行の融資も、ネパールの経済発展にとってプラスになるなら、もちろん歓迎する。皆さんにも期待している。日本でどんどん稼いで、ネパールに投資 してください。中国の発展は、決してIMFや世銀に依存して成し遂げたものではなく、在外華僑の資本が大きい。自分たちの努力で国を良くしよう、という意識を持ってください。 マオイストは自由競争にコミットメントしてもかまわない。新しい国には、新しい発想が必要だ。皆さんもどんどん良いアイディアを提供して欲しい。

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