INTERBAND

For Peace-Building&Democratization


■2002年東ティモール大統領選挙

独立の英雄と協力するNGO−平和実現のために行動

阪口直人(インターバンド事務局長)
(2002年5月8日琉球新報掲載)

シャナナ·グスマンのカリスマ性

シャナナ・グスマン氏への期待の大きさは、大統領選挙に向けた最終キャンペーンに集まった民衆のまなざしを見れば明らかだった。

「ビバ! シャナナ·グスマン!」「ビバ!」首都ディリ市内のサッカーグランド「デモクラシーフィールド」を埋め尽くした数万の民衆は、シュプレヒコールを繰り返し、男も女もまるで恋をしているような瞳でグスマン氏を迎えた。そこには未来を担うリーダーを一人一人が支えようとする温かさを感じた。

日本のような成熟した国家においては、政治リーダーのカリスマ性は必ずしも必要ではないかもしれない。しかし、苦難を乗り越えて21世紀最初の国家を建設しようとしている東ティモールにおいて、インドネシアの過酷な人権弾圧に完全と立ち向かい、抵抗のシンボルから独立の英雄になったグスマン氏のカリスマ性、そして彼を中心にしたエネルギーのうねりが必要なことを誰もが知っていた。誇るに足るリーダーを持つ東ティモールの人々を羨ましく思うと同時に、グスマン氏のカリスマは、彼を支える人々との共同作業によって作られたものだと強く感じた。

NGOによる民主化支援

インターバンドは、これまでカンボジア、スリランカ、コソボ、バングラディッシュ、ハイチ、フィリピンなどに選挙監視ミッションを派遣した。さらにカンボジアでは動員解除された兵士を社会復帰させるためのプロジェクトを展開するなど、紛争後平和再建·民主化支援活動を行うNGOである。東ティモールに選挙監視チームを派遣したのは今回の大統領選挙が3回目である。

1999年8月の独立住民投票の帰りに訪ねた時、グスマン氏は獄中にいた。総司令官としての立場を含む独立に向けての17年間のゲリラ活動に対しインドネシア当局は国家騒乱罪を適用、1992年に逮捕されていたからだ。制憲議会選挙に監視ミッションを派遣した昨年8月には、すでに釈放され大統領の最有力候補になっていたグスマン氏と交流の機会を持った。その際、世界の平和実現のために行動する市民であることを宣言した氏は、約束通りインターバンドが東アジア支部長を務めるANFREL(アジア自由選挙ネットワーク。アジアの民主化を支援するNGO)の一員としてカンボジア地方選挙監視に現れた。我々は仲間としてカンボジアの民主化支援に共に汗を流した。

沖縄に感銘受ける

今回の大統領選挙監視チームの派遣は、その時のグスマン氏との約束を実現するものだった。22歳の大学生を含む様々な経歴の総勢15名参加したが、沖縄からは南西地域産業活性化センター主任研究員の上杉勇司氏が駆けつけた。

候補者訪問としてグスマン氏にインタビューを申し込んだところ、彼は選挙前日の夕方、分刻みのスケジュールを縫い、何と約1時間を費やして選挙活動のことや大統領候補としての将来のビジョンを熱く語ってくれた。74団体が参加した国際選挙監視チームの中で、破格の扱いであったと言えよう。

グスマン氏は有力な大統領候補として1月に来日した。小泉首相以下、日本政府との会合の機会を持ったが、とりわけ感銘を受けた場所は沖縄だったと言う。沖縄と東ティモールには多くの接点がある。医療政策に話が及んだ時、グスマン氏は全てのサブディストリクト(郡)に医者を定着させ、東ティモールの医療活動の向上に実現したいと政策を語ったが、上杉氏は沖縄の離島医療政策を例に挙げ、日本とアジアを結ぶ新しい拠点としての沖縄の試みが、東ティモールにも応用できる可能性があることを告げた。東ティモールが外貨獲得の有力な手段として今後進めていく観光開発においては、エコツーリズムの推進が大きなテーマだが、西表島などで推進されている沖縄の事例は大いに参考になるに違いない。

4月14日に行われた投票の結果、予想通りグスマン氏は圧勝した。82・69%の得票を得て、初代大統領に選ばれた。昨年8月30日に行われた制憲議会選挙で最大政党のフレテリンは88議席中55議席を占めたが、そのフレテリンとグスマン氏は、民族和解の在り方への考えの違いから対立していた。大統領選挙における得票率が議会における今後の発言力を左右すると言われていたが、国民は圧倒的な支持で応えたのだ。

10月にパキスタンへ

選挙監視活動においては必ずしも専門知識は必要ではない。しかし、暴力や脅迫などの実力行使が発生する可能性のある紛争地において選挙活動のモラルサポートを行うという立場上、自分の役割を把握すると共に、英語で書かれた選挙法の研究、投票に関するマニュアル研究などを正確に行う必要がある。また、多くは外国人と共に構成されるチームにおいてパートナーおよび通訳と円滑にコミュニケーションを行う外国語能力も必要だ。

将来国際協力に関わりたいと考えている人にとって貴重な第一歩になると同時に、様々なフィールドで活動を続けてきた国際協力のエキスパートにとっても、奥の深い活動でもある。何よりも一国の歴史が変わろうとする現場に立ち合えるのは大きな魅力だ。

インターバンドが派遣する次回選挙監視ミッションは、10月のパキスタン総選挙支援である。アフガニスタンでの戦争に関し、米軍への協力の在り方で、パキスタン政府は苦渋の選択を迫られたが、米軍問題は沖縄が抱える大きなテーマでもある。インターバンドでは、再び広く参加者を募る予定だ。平和再建、民主化支援活動に関心を抱く沖縄からの参加者を歓迎したい。

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